コムスン事件

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「グッドウィル」が廃業、労組が雇用確保など申し入れ 08/01/08(読売新聞)

 日雇い派遣大手「グッドウィル」(東京都港区)が31日、廃業した。

 近日中に東京労働局に労働者派遣事業の廃止届を提出する。廃業とともに、給料支払いなど残務処理の担当者を除き、従業員は退職する。

 同社によると、23日現在で登録スタッフ約6100人のうち転職先が決まったのは約3600人で、内勤従業員は約4000人のうち数百人程度しか転職先が見つかっていないという。労働組合「グッドウィルユニオン」は31日、雇用確保と生活保障を求める申し入れ書を同社と親会社「グッドウィル・グループ」に提出した。

中国新聞(2008年1月5日)より

買収資金833億円 売却500億円 グッドウィル、同業者子会社化時

不可解 差額388億円 ファンドに消える?

コムスン、202事業所で不正請求 返還4億3千万円 08/15/07(朝日新聞)

 訪問介護大手のコムスン(東京都港区)が介護報酬を不正請求していた問題で、厚生労働省は15日、6月15日時点の集計で同社の計202事業所で不正請求が行われており、介護報酬の返還対象となる額は4億3053万円にのぼることを、山井和則衆院議員(民主)の質問主意書に対する答弁書で明らかにした。

 厚労省と各自治体は、コムスンを含む広域訪問介護事業者に対して8月下旬終了をめどに監査を実施しており、不正請求の状況を改めてとりまとめる。

 コムスンについては、今年7月には栃木県の19事業所で、8月には愛知県の1事業所で不正請求が発覚。うち栃木県の1カ所では訪問介護員などの職員が確保できていないのに介護事業所の指定申請を行い938万円の介護報酬を得ていたことがわかるなど、新たな不正請求が次々と明らかになっている。不正請求の事業所数と総額はさらにふくらむ見通しだ。

 厚労省では今年7月、不正請求の再発を防止するための第三者委員会を発足させ、早期に介護保険法の改正を目指すとしている。

コムスン:1年余り責任者不在 岐阜県が介護報酬返還指導 08/07/07(毎日新聞)

 訪問介護最大手コムスンの岐阜加納ケアセンター(岐阜市加納御車町)で、サービス提供責任者が1年余り不在で介護計画も作られていなかったとして、岐阜県は6日、浜田智弥東海支社長を県庁に呼び、その間の介護報酬約3100万円を関係市町に返還するよう指導した。浜田支社長は「厳粛に受け止め、返還します」と答えた。

 県によると、同センターは03年3月1日の設置時から04年3月末までの間、サービス提供責任者が不在で、法律で義務づけられている訪問介護計画も作成されていなかった。県は、サービス内容が確認できないためサービスが行われなかったとみなし、介護報酬を保険者の岐阜市、各務原市、岐南町に返還するよう求めた。

 また県は、同社の県内の指定事業所9カ所に対する監査の結果、8事業所で管理者や訪問介護員が他の事業所と兼務するなどで人数が基準を満たしていなかったことを明らかにした。また、介護計画に基づかないサービス提供や「見守り」など介護報酬の対象とならない請求も見られたという。【宮田正和】

コムスン、愛知でも400万円不正請求…常勤職員数偽る 08/06/07(読売新聞)

 訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)による介護報酬の不正請求問題で、愛知県の1事業所が常勤職員数を虚偽申請し、約400万円を不正請求していたことが県の監査でわかった。県は6日、同社に返還を求める。

 監査によると、同事業所は常勤職員を2・5人と申請しながら、実際には1人しか勤務していなかった。

コムスンの不正介護報酬請求、5億円…12都県が認定 07/22/07(読売新聞)

 訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)による介護報酬の不正請求問題で、自治体が認定した不正額は12都県で計5億円余であることが21日、読売新聞の調査でわかった。

 事業所指定を受けた際の虚偽申請などが理由で、各自治体では同社に返還させる方針だ。ただ、生活援助サービスを身体介護と偽るなどした水増し請求は東京などでしか確認できず、適正な請求が行われているかどうかのチェックが事業者任せになっている実情も浮き彫りになった。

 不正請求が確認されたのは東京、青森、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、神奈川、長野、兵庫、岡山、香川の計12都県。監査中も20道府県あり、総額はさらに膨らむ見通しだ。青森、宮城など9県はすでに返還請求し、東京と神奈川も近く返還を求める。埼玉に対しては20日、コムスン側が自主返還を申し出た。

 不正請求とされたのは、〈1〉訪問介護事業所の指定を受ける際、勤務していないヘルパーを常勤扱いにするなど虚偽申請をした〈2〉介護サービス時間を実際より長くしたり、生活援助を報酬の高い身体介護と偽ったりして、介護報酬を水増し請求した――の2種類。各自治体では、原則として虚偽申請については不正があった期間中に支払われた介護報酬の全額、水増し請求については水増しが確認された分の返還を求めている。

 12都県のうち、虚偽申請は9都県で明らかになった。神奈川では2事業所が対象で、不正請求額は1億円超。兵庫では現時点で判明している2事業所に加え、別の事業所でも虚偽申請の疑いがあり、さらに数千万円が不正請求と認定される可能性があるという。

 一方、コムスンでは昨年4月の改正介護保険法施行を前に、本社の指示で事業所の約7割で、掃除などの生活援助の一部を身体介護に変更していたことがわかっているが、水増し請求は東京、宮城、茨城、群馬、埼玉の5都県でしか認定されていない。厚生労働省が今年4月に都道府県に通知したコムスンなどの一斉監査も、虚偽申請や人員配置のチェックが中心だったため、「問題なし」も15県に上っている。

 同社の内部文書で、サービス変更の「達成率」が94%とされた「甲信地区」。しかし、山梨では単純な手続きミスの指摘だけで不正額の認定はゼロ、長野でも1事業所の虚偽申請で約240万円の返還を求めただけだった。これについて、長野県の担当者は「ケアプランと利用者の介護実態を突き合わせないと水増しかどうかわからず、現実的には難しい」と話した。

 水増し請求の実態把握のために、コムスンに自主点検させた自治体もある。

 群馬では「ヘルパーの移動時間がサービス時間に含まれていた疑いがある」として、自主点検を指導。その結果、コムスンは約1900万円の水増し請求を報告した。東京でも、自主点検によって約1億2450万円が上積みされている。

 しかし、不正発覚を受けて自主点検を求めた自治体は少数派。介護報酬の9割は介護保険料と税金で賄われているが、「逃げ得」を許しかねない状況になっている。

コムスン、介護報酬請求で「水増し」指示…全事業所へ文書 07/21/07(読売新聞)

 訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)による介護報酬の不正請求問題で、同社が全国のケアセンター(訪問介護事業所)に対し、利用者に提供している掃除などの生活援助サービスの一部を、報酬の高い身体介護サービスに変更するよう一斉に指示していたことが20日、同社の内部文書でわかった。

 不必要なサービスの上乗せによる水増し請求は事業所単位だけではなく、組織的にも行われていたことになる。介護保険法違反の可能性もあり、厚生労働省は同社から事情を聞く方針だ。

 同社のケアセンターは2006年6月時点で1183か所。文書は、同年4月からの改正介護保険法施行を前に、本社の事業本部から2月2日付で出された「『訪問介護事業』対応基本方針」で、各ケアセンターに送られた。

 この制度改正では、介護給付費抑制のため、訪問介護事業では介護の度合いの軽い人への給付額が減らされた。掃除や洗濯などの生活援助サービスについては、法改正前は30分ごとに報酬が加算されていたが、1回のサービスにつき1時間半で打ち切られることになった。たとえば、サービス提供が2時間の場合、報酬は約3700円から約2900円に減額になる。

 文書では、同社が行っている約84万件の訪問介護サービスのうち、約5万件が打ち切りの対象になると説明。その対策に「生活援助を2時間提供していた場合、そのうち30分を身体介護に変更する」として、「要介護1」以上のすべての利用者を対象に、報酬が加算されなくなる分を一律に身体介護サービスに切り替えるよう指示している。

 身体介護は入浴を手助けしたり、食事を食べさせたりするもので、生活援助よりも報酬が高い。2時間のうち30分を身体介護にすれば、報酬は約4800円に増える。文書では、変更は〈1〉自立支援ケアの実践〈2〉非常勤ヘルパーの給与増〈3〉売り上げ増――という結果を生むとして「これこそが厚労省が事業所に目指させているもの」としていた。

 昨年4月に開かれた本社の戦略会議では、変更が行われたかどうかの達成率が支社別に公表され、平均(72%)を下回っている支社は、達成率を上げるよう厳しく求められた。

 九州地方の元センター長は、「利用者の実情にかかわらず、変更するよう指示された」と証言。変更できないと理由を聞かれるため、食事の味見を一緒に1、2分程度しただけで身体介護にしたり、実際にサービスをしていなくても報酬を請求したりしたこともあったという。

 コムスンを巡っては、東京都などの調査で、一部の事業所で介護保険対象外の散歩への付き添いを「身体介護」と申請するなどしていたことが明らかになったが、本社の指示を受け、こうした水増しが行われた可能性もある。

 介護保険法は、利用者の心身の状況や選択に基づいて、適切なサービスが効率的に提供されなければならないとしており、一律の変更は同法違反にあたる。厚労省老健局の古都(ふるいち)賢一振興課長は「一律のサービス変更は不適切。指示の趣旨について事情を聞きたい」と話している。

 これについて、コムスン広報室は「法改正を機に、利用者の自立支援を図ろうとサービス内容の見直しを提案した。不正請求の意図はない」としている。

 立教大の高橋紘士教授(介護保険論)の話「コムスンは軽度者にサービスを大量に提供することで、売り上げを確保してきたので、不要なサービスを抑制する制度改正への危機感があったのではないか。介護報酬を支払った自治体は、不要なサービスや過大請求がなかったかを調査すべきだ」

コムスン:処分後1カ月で事業所3割減 売却に影響も 07/21/07(毎日新聞)

 厚生労働省から事業所の新規指定・更新禁止処分を受けた訪問介護最大手「コムスン」の指定事業所数が、処分後の約1カ月間で3割近く減り、1508カ所(1日現在)になったことが20日、分かった。毎日新聞の取材に同社が明らかにした。利用者数も約5000人減った。

 同社は、今月末までに事業譲渡計画を同省に提出し、その後、外部の譲渡先を決めるとしているが、事業規模の大幅縮小は売却交渉にも影響を及ぼしそうだ。

 同省は6月6日、同社が不正に介護事業所指定を取得していたとして処分を受けた。

 処分前(5月)の指定事業所数は計2081カ所。内訳は訪問介護が1110カ所で最も多く、次いでケアマネジャーがいる居宅介護支援353カ所▽認知症対応型共同生活介護190カ所▽訪問入浴101カ所▽通所介護(デイサービス)98カ所−−などだった。

 それが、今月1日現在では計1508カ所に。訪問介護は約4割減の665カ所だった。そのほか、▽居宅介護支援295カ所▽認知症対応型共同生活介護183カ所▽訪問入浴87カ所▽通所介護87カ所−−と、大半のサービスで事業所数が減少していた。

 利用者数も6万5284人(2月)から6万371人(6月末)に4913人減った。

 同社は、処分を受ける前から、介護保険法改正による収益の悪化を理由に事業所の統廃合を進めており、「処分と事業所数減は関係ない」(広報室)と話している。また、「現在も統廃合を進めており、(事業譲渡計画がまとまる)今月末には事業所数はさらに減っている可能性がある」(同)という。【柴田朗】

グッドウィル:派遣に備品押し売り ロゴ入り衣類ノルマに 07/14/07(毎日新聞)

 日雇い派遣労働者の給与からの「データ装備費」天引きが問題となっている日雇い派遣最大手「グッドウィル」(東京都港区)が、派遣労働者に同社のロゴ入りポロシャツやトレーナーなどを半ば強制的に買わせていることが複数の元支店長の証言などで分かった。支店には備品の販売ノルマを課され、「備品の着用が仕事紹介の条件」などと言って販売していたという。同社では、データ装備費の徴収もノルマ化されていたことが既に明らかになっている。

 関東地方の元男性支店長(35)によると、備品には▽Tシャツ(500円)▽トレーナー(1000円)▽軍手(300円)▽カッター(200円)−−などがあるという。元支店長は「月々、新規登録者1人につき700円の販売ノルマがあった。達成できないと、上からきつくしかられた」とノルマによる厳しい締め付けを証言する。労働者に売りつけるため「紹介できる仕事の6〜7割で、ユニホームが必要」などと口実を付けた。ノルマとうそを言う心苦しさから、自ら買い取ることもあったという。

 ノルマ達成のため違法な給与天引きをしている支店もあるという。中部地方の元男性支店長(28)は「日々の交通費も払えないほど生活に困窮している人もいて、そういう場合は代金を給与から天引きした」と打ち明ける。販売ノルマは月7万〜8万円だったという。

 一方、同社で4年間、日雇い派遣を続ける東京都内の男性(28)は、解体現場の片づけの仕事で「ロゴ入りジャンパーの着用が仕事の条件だ」と言われ購入した。「複数の派遣会社のスタッフが働くので、他社と識別する必要がある」と説明されたが、実際に現場で着用している労働者は数人しかいなかったという。中部地方の支店に派遣登録する男性(28)は「必要だと買わされたトレーナーを、現場で向こうの作業着に着替えさせられた」と不満を口にする。別の男性(34)は「新規の登録者は相手の言い分を信じて買ってしまう。新人に集中的に売りつけている」と話している。

 備品販売について、関東地方の支店長は「ノルマは確かにあるが、労働者の安全を考えて売ったこともある。すべてが押し売りではなかった」と釈明。同社広報IR部は「福利厚生の一環として、登録時に廉価で案内している。強制ではなくあくまでも任意」などと話している。【市川明代、東海林智】

グッドウィル:「データ装備費」天引きノルマ化…元支店長 07/11/07(読売新聞)

 日雇い派遣最大手「グッドウィル」(本社・東京都港区)が派遣労働者の給料から「データ装備費」の名目で天引きをしていた問題で、各支店で徴収がノルマ化され、本社に吸い上げられていたことが分かった。中部地区の元支店長の男性は「データ装備費は収入源だった」などと実態を証言した。同社側は装備費について「派遣労働者に説明し、納得してもらい任意で徴収していた」などとしているが、天引きの不透明さが改めて浮かび上がった。

 元支店長は20代で、中部地区で同社の登録スタッフから契約社員となり、05年中ごろから約1年間、支店長を務めた。装備費について「収入源であり、稼働人数分掛ける200円がノルマだった。1人分でも欠けると、上へ理由を説明しなければならなかった」と、徴収の強制性を強調。

 派遣労働者には「保険です。1000万円の物を壊して困るのはあなたです」などと説明し、サインさせていたといい「弱い立場の人から金をむしりとるようなことはすべきではなかった」と悔やんでいる。使途については「上に吸い上げられたので、何に使われていたのかは分からない」と話している。

 登録スタッフとして働いている都内の女性(39)は「使途について、情報管理費用、保険料の一部などと、聞くたびに違う説明を受けた。一貫性がなく、その場しのぎで理由をつけて集めていると感じた」と証言する。また、都内在住で7年間同社に登録して働いている男性(28)は、内装工事中に肩を切るけがをしたが、補償がなかったため疑問を感じたという。

 男性は「使途を聞いてもまともな答えはなく、徴収を拒否すると告げると『それでは仕事が出せない』と言われた。保険として機能していないのに拒否は許されなかった」と訴えている。

 グッドウィルのデータ装備費をめぐっては、会社側が労働者らの批判を受けて6月、過去2年分、約37億円の返却を発表。派遣労働者でつくる「グッドウィルユニオン」はこれに納得せず、「使途も不透明で、不当利得にあたる」として、95年の事業開始当初にさかのぼって全額返却を求める集団提訴の方針を決めている。【東海林智、市川明代】

グッドウィル名義借りか、一部支店に派遣元責任者を置かず 07/05/07(読売新聞)

 グッドウィル・グループの人材派遣大手「グッドウィル」(東京都港区)の一部の支店で、労働者派遣法で配置が義務付けられた「派遣元責任者」が不在になっていることが、関係者の話でわかった。

 同社では、労働局の行政指導を免れるために、こうした支店の派遣元責任者を他支店の社員が務めているように装う名義借りや、社員に資格があるように見せかける経歴の偽装が恒常的に行われていたという。厚生労働省でも実態調査を始める。

 派遣元責任者は、派遣労働者からの苦情の受け付けや、安全衛生の管理、派遣先企業との連絡調整などにあたる。指定講座を受講し、成年後に3年以上、雇用管理の経験を有することなどが有資格者の条件。労働者派遣法では、派遣されている労働者の権利を守るために、労働者100人以下の事業所は1人、100人超200人以下は2人などと定数を決めている。

 ところが、複数の関係者によると、同社の一部支店では、社員の入れ替わりが激しく、派遣元責任者が不在になるケースが頻繁に起きていた。このため、労働局から調査の通告があると、人事異動を装って有資格者を配置したことにして、行政指導を免れていたという。

 東北地方の元支店長は、経理担当のアルバイトを名義だけ県内の別の支店の派遣元責任者にしたり、同じ社員に2支店の責任者をかけ持ちさせたりしていたと証言。「労働局の調査は20〜30分程度の形式的なものなので、本人が不在でもばれない。名義借りは常態化していた」と話した。

 また、西日本の支店では、大学卒業後間もない社員を、3年以上の実務経験が必要な派遣元責任者とするため、「大学中退」と経歴を詐称させていた。他県勤務の社員を派遣元責任者とし、90キロ以上離れた隣県の支店に特急列車で通っていることにしていたケースもあったという。

 同省は、名義借りについて「支店で派遣労働者を管理している実態がなければ『架空』の派遣元責任者ということになる。事実とすれば問題だ」としている。同社の場合、5月末時点の事業所数は853で、少なくとも同数の派遣元責任者が必要だが、別の人材派遣会社幹部は「業界は離職率が高く、それだけの人数を確保するのは難しいはず。相当無理をしているのではないか」と指摘している。

 グッドウィル・グループでは、傘下の訪問介護大手「コムスン」でも、勤務実態のないヘルパーを常勤と偽るなどして介護事業所の指定を受けていた不正が発覚しており、グループの体質が問われそうだ。

 同グループ広報IR部では「法令を順守し、派遣元責任者は不足なく配置している」とコメントしている。

朝日新聞(2007年7月5日)より

制度改正 業者を翻弄 「コムスン退場」の影

「訪問介護、自転車操業だ」

朝日新聞(2007年7月4日)より

コムスン問題と介護制度

「お客は『数』だった」

朝日新聞(2007年7月3日)より

グッドウィル 二重派遣で港湾業務

禁止対象、労災事故も

コムスン:処分1カ月 GWGの株価下落、経営不安高まる 07/04/07(毎日新聞)

 訪問介護最大手コムスンが、厚生労働省から新規事業所の指定打ち切りの処分を受けてから6日で1カ月。親会社のグッドウィル・グループ(GWG)は、介護事業からの完全撤退を表明したが、事業の売却交渉に大きな進展は見られない。GWGは問題発覚を受けて株価の下落が続く。本業の人材派遣でも、派遣労働者の給料天引き問題が顕在化するなど、経営に対する不安が日に日に高まっている。

 ■水面下の売却交渉

 「GWGから何の連絡もない」。介護事業の買収に意欲を見せる企業幹部は、いら立ちを隠さない。買収には約30社が名乗りを上げており、全事業の一括引き受けを表明するニチイ学館が有力だ。居酒屋チェーンのワタミは、中小の介護事業者らとの連携で、全事業の買収を打ち出して対抗する。しかし、両陣営とも「GWGとの交渉は進んでいない」という。

 GWGの折口雅博会長は、行政処分の直後にテレビ出演を繰り返して以来、公の場から姿を消した。ある候補企業は「コムスンの樋口公一社長とも連絡が取れなくなった」と明かす。GWGは「各自治体から意見を聞くことを優先している」と説明するが、「交渉が始まらないと、具体的な引き受け策がまとまらない」との声もあり、GWGが目指す7月末までの譲渡先決定は難しいとの見方が強まっている。

 ■利用者離れも

 売却交渉の行方が見えない中、一部の自治体では、独自に利用者を他の事業者に移す動きが出ている。北関東のある自治体は6月中に、コムスンの施設介護の利用者を他の事業者に移管した。コムスン従業員の大半が加入する労働組合の日本介護クラフトユニオンには、市町村が主導したとみられるコムスンからの顧客流出の事例が、多数報告されているという。

 コムスンは、過疎地などの不採算地域の利用者も抱えている。それでも各社が一括買収に乗り出すのは「都市部のシェア拡大で収益率を上げれば、不採算地域の赤字をカバーできる」(ニチイ)ためだ。都市部の利用者流出が続けば、過疎地を含めた売却交渉に影響を与えかねない。

 ■経営全体に波及

 GWG株の4日終値は4万3350円で、この1カ月間で半値近くまで落ち込んだ。積極的なM&A(企業の合併・買収)で急拡大を続けてきたGWGは財務基盤が脆弱で、3月末の自己資本比率は5.2%と、30%前後が一般的な事業会社の中では極端に低い。格付けもBBBマイナス(日本格付研究所)と、破たん懸念先を示すBB格の一歩手前まで落ち込んでいる。

 GWGは資本不足を解消するため、ドイツ銀行を引き受け先とする増資を打ち出した。しかし株価が下がるほど調達額が減る特殊な仕組みで、市場は「不利な条件でしか調達できないほど、追い込まれている」(証券会社)とみて、同社株に売りを浴びせた。

 また、本業の人材派遣では、派遣労働者から「不当な給料天引き」との批判が出ていた「データ装備費」について、2年分の約43億6000万円を返還すると発表した。労組側は10年分の返還を要求しており、返還額が増えれば、財務基盤を更に揺るがせることになる。一連の問題で、派遣労働者や取引先離れも懸念され、不透明な経営のツケが一気に回ってきた形だ。【宮島寛】

グッドウィル日雇い 二重派遣で禁止業務 厚労省調査へ 07/03/07(朝日新聞)

 グッドウィル・グループの子会社で日雇い派遣大手グッドウィル(東京都港区)から派遣された男性スタッフ(27)が、職業安定法に違反する二重派遣の状態で、労働者派遣法で禁止された港湾での荷物の積み下ろし作業をしていたことがわかった。男性が三井倉庫(同)の構内で労災事故にあったことで明るみに出た。グッドウィルが労災を適切に報告しなかった疑いもある。同じ状態で働く人は多数いるとみられ、厚生労働省はグッドウィルが違法派遣にかかわった可能性があるとみて調査し、違法性が確認されれば行政処分を検討する。

 関係者によると男性は今年2月9日、東京都江東区の港湾地区にある三井倉庫の構内で、同社下請けの笹田組(横浜市中区)の指示のもと、25キロの粉袋を荷台に積む作業中に荷崩れに巻き込まれ、左ひざが折れるなど全治3カ月の重傷を負った。

 男性はグッドウィルの藤沢支店(神奈川県藤沢市)から東和リース(東京都港区)に派遣されていた。東和リースは笹田組と請負契約を結んでいたが、男性は笹田組の指示で働く偽装請負の状態で、実態は派遣だった。これは二重派遣となり、職業安定法(労働者供給事業の禁止)に抵触する。また、港湾業務は安全面の問題などから労働者派遣が禁止されている。

 派遣労働者の労災は、派遣元と派遣先企業の双方が労働基準監督署に報告する義務があるが、笹田組は報告しなかった。グッドウィルは藤沢労基署に報告したが、派遣先の事業場名を形式的な派遣先の東和リースとし、事故時の作業も「倉庫内での仕分け業務」と実際と異なっており、労働安全衛生法違反の可能性もある。

 日雇い派遣業界では、港湾や建設、警備といった禁止業務への派遣や、二重、多重派遣の横行が指摘されてきた。東和リースはグッドウィルのスタッフを三井倉庫を含む複数の会社に長年送り出しており、多数の労働者が違法状態で働いていた可能性が高い。男性が加入するグッドウィルユニオンの関根秀一郎書記長は「ほかにもグッドウィルの日雇い派遣労働者から、建設現場で働いたなどの相談が多数ある」と話す。

 グッドウィルは05年6月、建設業務への派遣を繰り返し、東京労働局から事業改善命令を受けており、厚労省はこの事実を重視。違法な派遣への関与が確認され、悪質と判断されれば、事業改善命令や事業停止命令が出される可能性がある。

 グッドウィル・グループ広報IR部は「東和リースと笹田組は請負契約で二重派遣ではない。事故時の作業は港湾業務ではなく、労基署への報告にも問題はない」としつつ、東和リースが二重派遣や港湾業務に従事させた「疑義がぬぐえない」として、当面同社との取引をやめるという。

グッドウィル:「データ装備費」徴収も保険金支払わず 06/27/07(毎日新聞)

 グッドウィル・グループ(GWG)の人材派遣子会社「グッドウィル」が、派遣労働者の賃金から天引きした「データ装備費」を、保険料の原資などと説明しているにもかかわらず、重傷事故に遭った労働者に保険金を払っていなかったことが分かった。個人加盟の労組全国ユニオン(鴨桃代会長)などが厚生労働省と26日行った交渉で、東京都在住の男性(27)が告発した。

 男性は2月9日、東京都内の倉庫で脱脂粉乳の袋の詰め替え作業中に、左ひざに約3カ月の重傷を負った。救急車を頼んだが約30分放置され、会社の車で病院に運ばれたという。01年に登録し、働くたびにデータ装備費200円を徴収されたが、保険適用を求めると会社側は「保険は今はない。労災でまかなう」と答え、労災保険以外の補償はなかったという。男性は「装備費は何に使われたのか、詐欺のようだ」と話している。

 GWGは装備費を2年間さかのぼり返却すると表明している。26日の交渉では組合側が、グッドウィル以外の派遣会社でも返還指導を求めた。【東海林智、市川明代】

コムスン事業所廃止件数、監査後に集中 2カ月で400件 06/19/07(朝日新聞)

 事業所指定での虚偽申請や「処分逃れ」とみられる事業所廃止手続きが指摘され、厚生労働省から処分を受けた訪問介護最大手のコムスン(東京都港区)による事業所廃止の件数が、同省が都道府県に一斉監査を指示した4月以降に増加し、5月末までの2カ月間で400件に達していることが、朝日新聞の調査でわかった。

 同社は「拠点を統合することで、適正な運営状況を実現するため」と廃止の理由を説明したが、自治体が指定取り消し処分に必要な書類を準備しているわずかなすきを突いて廃止届を出す事例が東京都で判明するなど、「処分逃れ」が巧妙に行われている形跡がうかがえる。

 朝日新聞が、東京都が一斉監査に乗り出した昨年12月から今年5月までの月別廃止事業所数を、47都道府県にきいた(福岡は12月は不明)。

 昨年12月の19件は今年1月には10件に減少しているものの、その後は増加に転じ、2月11件、3月43件、4月61件。5月は前月の5倍以上の339件に急増していた。

 5月の廃止件数が最も多かったのは東京都の80件。続いて埼玉49件、神奈川42件、福岡35件、大分・新潟各12件、兵庫11件などだった。

 5月に廃止件数が急増した理由について同社広報室は「07年2月から、配置適正化計画を進めている。拠点を統合することで人員体制の充実を図り、適正な運営を実現することを目的にしていた」と回答している。

コムスン:合併前「日本介護サービス」も同様不正 06/18/07(毎日新聞)

 訪問介護最大手「コムスン」に00年に吸収合併された訪問介護会社「日本介護サービス」で、今回発覚した虚偽申請と同様の不正が行われていた疑いがあることが分かった。合併するまで同社社長はコムスンの樋口公一社長(65)が務めていた。ケアプラン(介護利用計画)の作成過程についても疑惑が浮上。関係者は、厚生労働省から介護事業所の新規・更新を不許可とされたコムスンの不正体質は、日本介護サービスのころから潜在化していたと証言する。

 樋口社長は96年、日本介護サービスを設立し、社長に就任。99年にコムスン取締役に就き、介護保険法が施行された00年に吸収合併された後、コムスン副会長を経て、同9月に社長に就いた。

 ケアマネジャー(介護支援専門員)の女性は99年9月に日本介護サービスに入社した。この女性によると、配属された関東地方の事務所に、新設される別の事務所の書類が誤ってファクスで届き、そこに自分のケアマネの登録証明書のコピーが添付されていたという。今回のコムスンの問題でも、同様に実際に雇っていないヘルパーらが勤務しているように虚偽申請していた事実が複数発覚している。事務所の介護福祉士に聞くと「こういう不正はよくやっている」と話していたという。

 また、社員から「端末を渡すからアセスメントを打ち込んでもらう予定だ」と説明された。アセスメントはケアプラン作成前に利用者の身体状況や家族環境などを下調べした内容をまとめたもの。利用者の意向も聞かず、あらかじめ用意したケアプランパターンに当てはめ、作業を効率化するようにという計画だったという。女性は「これを持っていって利用者を納得させろということかなと思った」と振り返る。

 女性は「今回発覚したような違法行為は日常茶飯事だった。折口雅博会長とともに樋口社長のビジネス手法にも関係するのではないか」と話している。【苅田伸宏】

コムスン:在宅介護相談の4割占める 改正法施行後、急増 06/16/07(毎日新聞)

 介護事業所の新規・更新を不許可とされた「コムスン」の在宅介護業務に関して、全国の消費生活センターに寄せられた06年度の相談は64件で、同種相談全体(147件)の4割以上を占めたことが、国民生活センターのまとめで分かった。前年度と比べると約2.5倍に増えていた。

 相談件数は、コムスンが「グッドウィル・グループ」の子会社となった99年度までの3年間は1件だけだったが、介護保険法が施行された00年度は10件、05年度26件、06年度は64件と急増した。06年4月に、改正介護保険法が施行され、介護報酬が抑制されたことも一因とみられる。

 06年度のコムスンに対する相談延べ件数は「契約・解約」が最も多く47件。05年度の16件から大幅に増えた。次に多いのは「接客対応」の22件で、05年度は9件だった。「品質機能」「価格・料金」も10件ずつあった。

 具体的な相談内容は、「訪問介護に来た人が、仕事をせずに漫画を読んだり携帯電話を掛けていた」(東京都)、「約束の時間にヘルパーが来なかった」(兵庫県)、「スタッフが『試供品だ』と持ってきた紙おむつを使ったら、代金を請求された」(青森県)など。東京都消費生活総合センターには「料金を支払ったはずなのに債権回収業者から通知が来た」という相談が、昨年11〜12月に20件近く寄せられた。

 高橋信幸・長崎国際大大学院教授(介護保険論)は「コムスンの無理な事業拡大で、事業所は顧客獲得などを迫られ、モラルハザードを起こしたのではないか。高齢者は『お世話になっている』という感覚が強い。潜在的に相談や苦情は何倍もあるはず」と話している。【苅田伸宏】

コムスン強引商法、ケア責任者やヘルパーらの証言続々 06/16/07(読売新聞)

 介護事業所指定の虚偽申請などが発覚した「コムスン」の親会社「グッドウィル・グループ」(東京都港区)は、介護事業からの全面撤退に追い込まれた。

 厚生労働省からコムスンの行政処分が発表されて10日。この間、同社のケアセンター(介護事業所)の責任者やヘルパーからは、営業マンさながらのノルマや、不正のからくりについての証言が相次いでいる。介護を金もうけの道具にしようとした“コムスン商法”の実像は――。

 ◆ノルマ◆

 「本社から毎日のように電話がかかってきて、売り上げを伸ばすよう責められた」。東北地方の事業所でセンター長をしていた女性は、厳しいノルマの実態をこう打ち明ける。

 各事業所に課せられていたノルマは「純増4」。新規の利用者を毎月4人以上獲得することだ。

 顧客の新規開拓のため、月100軒の訪問も求められた。訪問先との一問一答は、本社に報告しなければならない。会議などでは、「赤字は罪悪だ」「赤字の事業所は、トイレの水も流せないはず」と、たびたび言い聞かされてきた。

 昨年夏以降には顧客数の増加だけでなく、実入りの多いサービスを利用させるよう求められるようになった。コムスンに入る報酬によってポイントを設定し、月8ポイント以上の新規開拓を義務づけられる。九州の事業所でヘルパーだった女性は、「ポイントなんて、スーパーの買い物みたい。人を人とも思わないやり方と感じた」と疑問を投げかけた。

 ◆架空請求◆

 厳しいノルマに悩まされた現場は、介護報酬の水増し請求に手を染めるようになる。西日本の事業所の担当者は、「症状の悪化を防ぐための予防介護のサービスでは、特に架空請求が多かった」と認める。

 介護報酬の請求書は、事業所ごとに介護サービスの予定表と実施記録を突き合わせて、パソコンで作成する。この事業所では「○日○時から90分」と予定を組んであれば、キャンセルされても、行ったことにして請求していたという。

 ノルマを果たせず、知り合いの名前を勝手に使って新規の契約を結んだように装ったセンター長も。利用者の負担分は、自腹を切った。センター長の退職や異動で支払いが滞って、相手に請求書が送られ、トラブルになったケースもある。

 東北地方の事業所では、口座引き落としで支払っていた一部の利用者に対しても、請求書を送付していたという。この事業所の担当者は「『いくらなんでも二重請求はまずいのでは』と上司に話したが、聞き入れられなかった」と話した。

 ◆取り立て◆

 「人を助けようと思って介護福祉士になったのに、未払いのサービス利用料の取り立てまでやらされたのがつらかった」。ヘルパーらは、こう口をそろえる。

 本社からは「サービスを提供したら、払うべきものは支払ってもらうのは当然」と厳しく言われ、亡くなった利用者の遺族の元に、何度も通わされたヘルパーもいた。

 コムスンでは、滞納している利用者への通知などの業務を債権回収業者に代行させていたが、こうした実態を、「まるで消費者金融のようだった」という関係者は多い。

 都内にあるグループ傘下の有料老人ホームで施設長をしていた男性は、「人を金を払わせる相手としか見ていないから、利用者にも従業員にも受け入れられなかった。人を軽視する会社に介護ができるはずない」と苦々しそうに話した。

コムスン:ケアマネに報奨金 利用計画に組み込み強制」 06/15/07(毎日新聞)

 介護事業所の新規・更新を不許可とされた訪問介護最大手「コムスン」が、自社のケアマネジャー(介護支援専門員)に対し、グループ企業のサービスをケアプラン(介護利用計画)に組み込むよう半ば強制していたことが分かった。会社側が実績に対して報奨金を支払うシステムで、介護保険法は、ケアマネがケアプラン作成に絡み利益供与を受けることを禁じている。同社は「報奨金制度は06年8月から適用し、人事評価制度の一環という認識だったが、このたび指導を受け廃止を決めた」としている。【市川明代、苅田伸宏】

 関係者によると、同社にはボーナス制度がなく、成績に応じて社員に報奨金が支払われている。ケアマネの場合、親会社の「グッド・ウィル・グループ」のグループ企業のサービスをケアプランに組み込めば、介護報酬の一定割合が報奨の対象となった。このため、一部ケアマネは単価の高い身体介護のほか、福祉用具販売・レンタルや介護タクシー、マッサージなどグループ内サービスを率先して売り込むことに躍起になっていたという。

 「半年で400万円の報奨金を手にしたケアマネもいた。報奨金を目的に、過剰なサービスを売り込んでも拒否されにくい『生活保護、認知症、独居』の3条件がそろった利用者を選り好みしていた」。05年にコムスンの関東地方のケアセンター長を勤めていた男性は、こう証言する。

 北海道のケアセンターで、以前ケアマネを務めていた男性は「会議では、自社グループの福祉用具を数多く販売したケアマネばかりがほめられた」と話す。男性は「利用者の多くは年金生活。割引率の高い他社サービスを使うべきではないか」と上司に訴えたが聞き入れられず、口先だけの「お客様第一主義」に疑問を抱き退職した。

 本来なら中立でなければならないケアマネが、勤務する事業所の「営業マン化」することは、業界全体の問題点として指摘されてきた。このため06年4月、介護保険法改正で、一部サービスについて同一法人のサービスだけを90%以上利用した場合、罰則としてケアプラン作成料を一部減額する特定事業所集中減算が導入された。

 ある介護事業者は「コムスンのグループ内サービスへの偏重は顕著だった。法改正で経営が悪化した事業所は多い。コムスンもグループ内サービスを強制しずらくなり、不正請求など違法行為につながったのではないか」と話している。

コムスン、ケアマネジャーに客獲得で報奨金…法抵触の疑い 06/13/07(読売新聞)

 介護事業所指定の虚偽申請などが明るみに出たグッドウィル・グループの「コムスン」(東京都港区)が、自社の施設利用者を増やすなどしたケアマネジャーに対する報奨金制度を設けていたことが13日、わかった。

 介護保険法は、介護事業者がケアマネに特定の事業所を利用するケアプラン(介護サービス計画)を作るよう指示したり、ケアマネが見返りに金品を受け取ったりすることを禁じており、厚生労働省はこの規定に抵触する可能性があると指摘している。

 一連の問題で、グループの折口雅博会長らは、記者会見で「会社ぐるみの不正はない」と繰り返し強調、現場職員の認識不足が原因だったと主張している。上層部の主導で不適切な営業が推し進められていた実態が裏付けられた。

 コムスンが設けていたのは「通所連動特別報奨金」制度。昨年9月に出た同社の内部資料や社員らの証言によると、コムスンのケアマネが自社や当時子会社だった「日本シルバーサービス」のデイサービスセンターの利用者を1か月に2人以上増やした場合、高齢者1人につき5000円を報奨金として給与に上乗せして支給していた。当時の事業本部長名で各統括部の責任者やケアマネに向けて出された文書では、「総合介護会社としての地位をより確立するため、各地域での顧客獲得に活用ください」と趣旨が説明されている。

 デイサービスセンターは高齢者が通って入浴や日常動作訓練を受ける施設。ケアマネは利用者に特定の事業者と契約するよう誘導することはできないが、近くにある事業所を教えることはできるため、利用者の判断に影響力を持っている。

 報奨金制度の導入には同社のデイサービスの利用者の伸び悩みが背景にあったといい、当初は期間限定で導入されたが、その後も継続されたという。今年2月には、月に1人の増加でも支給対象にし、報奨金額も1人につき1万円にアップさせるとする内部資料も作成されている。

GWG、経団連が無期限の活動自粛と会長の理事退任処分 06/11/07(読売新聞)

 日本経団連は11日、不祥事を起こした会員企業への対応を決める「定款13条委員会」を開き、グッドウィル・グループ(GWG)に対し、折口雅博会長の理事退任と、期限を定めず活動を自粛させる処分を決めた。

 GWGの子会社コムスンが厚生労働省から指定打ち切りの行政処分を受けたことを踏まえた措置で、「役職の退任」と期限を定めない「活動自粛」を合わせた処分は、これまで実際に行われた処分で最も重い。同様の処分は2004年に証券取引法違反に問われた西武鉄道と堤義明会長に対し、堤氏の理事退任と同鉄道の無期限の活動自粛とした例がある。

 委員会に先立ち、折口会長が同日午前、経団連を訪れ、「経団連にご迷惑をおかけし、社会をお騒がせしたことをおわびしたい」と、理事を退任する申し出があったという。

 処分を発表した御手洗冨士夫会長は「社会貢献を業としている以上、普通の会社より厳しい自己規律が求められている。大変残念で許し難いことだ」と述べ、GWGの対応を批判した。さらなる処分については、「決着がついた後に、改めて検討する」と述べた。

コムスン:現場に厳しいノルマ「月に最低4人増やせ」 06/12/07(毎日新聞)

 介護事業所の新規・更新を不許可とされた訪問介護大手「コムスン」が、利用者数と介護報酬額の確保や、集めるケアマネジャーの名刺数などについて、現場責任者らに厳しいノルマを課していたことが分かった。ノルマを達成できず早期に退職する管理職や社員もいたという。関係者は、上部からの厳しい締め付けが今回問題となった虚偽申請などの一因となったと指摘している。

 「上からうるさく言われる『純増4』『単価1万8000円』のノルマが常に頭にあった」。関東地方のケアセンターで05年にセンター長を務めていた男性は証言する。「(経費のうち)人件費を6割に抑え、利益を確保する」よう徹底され、少しでも利幅が出るように頭を悩ませる日々だったという。

 「純増4」は月に最低4人の新規利用者を確保すること。訪問介護の場合、利用者が死亡するなどして月に1割程度の「純減」が生じる。これを補うための目標だったという。「単価」は常勤ヘルパーの介護報酬目標で、1日に計1万8000円と設定されていた。06年4月の改正介護保険法施行前は、介護報酬の単価は身体介護が約4000円、生活援助が約2000円だった。各センター長は固定給の常勤ヘルパーを効率的に働かせ、なるべく単価の高い身体介護を組み込み1万8000円の目標を達成しようと躍起になっていた。

 月2回のセンター長会議では、トップのセンター長が「コムスンの誓い」などを唱和する際の音頭を取った。ノルマ最優先のやり方に男性は「利用者からキャンセルの連絡を受け、とっさに『単価が下がってしまう』と考えてしまう自分を恥じ、もうこのままでは続けられないと思った」という。男性は間もなく辞表を提出した。

 また昨年、グループ会社で介護付き老人ホームの施設長だった関東地方の男性は、コムスン社員から「ケアマネジャー100人分の名刺を毎月集める」というノルマを課せられた。ケアマネジャーに自分の施設を紹介してもらえるようにすることが目的だったという。

 会議が近づくと施設長は名刺を求めて外出してしまい、施設に電話をしても連絡が取れないことが多かったという。このノルマは間もなく取りやめになった。男性は「理由は不明だが、入居者の家族から『なぜ施設長がいないんだ』とクレームがついたのでは」と推測する。【市川明代、苅田伸宏】

コムスン:毎年、管理職数千人集め決起集会…アメとムチ 06/11/07(毎日新聞)

 訪問介護大手「コムスン」と親会社の「グッドウィル・グループ」(GWG)が毎年、グループ会社の管理職数千人を集めた決起集会を開催していたことが分かった。昼は成績順に社員を座らせて決意表明をさせる会議を開き、夜には豪華な宴会が催されたという。GWGの折口雅博会長(45)の勢いを誇示しながら、供応と厳しい締め付けの「アメとムチ」で利益第一主義を徹底させる目的とみられる。関係者は「施設では今日明日亡くなるかもしれない重介護者を抱えている。全国から幹部を集めるようなイベントは、介護の会社は普通やらない」と批判している。

 グループ会社元社員は昨夏、リゾート施設「シーガイア」(宮崎市)で開かれた1泊2日の集会に出席した。会議は昼に3時間。在宅介護と施設介護に分かれ、成績発表と決意表明をやらされた。成績順に座り、成績の悪い管理職は会議中立たされていたという。

 夜は室内プールのプールサイドにテーブルを並べ宴会が開かれた。スポットライトを浴びた折口会長がシャンパングラスを手にボートで登場。各テーブルを回って一人一人と握手し、「頑張りましょう」「よろしく」などと声を掛けたという。

 元社員は当時、介護付き有料老人ホームの施設長だった。入所者を預かる施設長を全員集めたことに疑問を抱いた。「経費の無駄遣い。GWGは同じ方向に向かう共通認識を持つため、こうしたイベントが重要と考えていたようだ」と話した。

 また、05年夏には横浜アリーナ(横浜市港北区)を貸し切って約8000人の集会が開かれた。コムスン元社員によると、折口会長が「疑問を持つこともあるかもしれないが、おれを信じてついてこい。決してコムスンの理念を忘れるな」などとあいさつしたという。会場には人気男性歌手も姿を見せ、折口会長は「私の友人です」と紹介。出席者の名刺を集めてくじ引き大会が開かれ、折口会長が抽選し、会場に持ち込まれた高級外国車が当たった社員もいた。「折口会長を崇拝している社員もいた」という。

 元社員は利用者増など日々の業務で課される厳しいノルマに疲れ、成績が悪ければ毎月の会議で叱責(しっせき)されるなどコムスンへの不信感を募らせ、間もなく退社した。

 コムスン広報室は昨年の会議について「通常、毎月1回東京本社で開催している会議の一環。年1回、新事業年度開始月だけは東京以外の地域で開催した」と説明している。【苅田伸宏、市川明代】

コムスン:法令無視の運営 シルバー社 施設長、兼務に 06/11/07(毎日新聞)

 訪問介護大手「コムスン」の介護事業不許可問題で、同社が「日本シルバーサービス」(NSS)を買収後、施設管理に専従しなければならない施設長を兼務とするなど、法令を無視した施設運営を強いていたことが分かった。「営業効率のみを重視したため」と指摘されている。親会社の「グッドウィル・グループ」(GWG)は、コムスンからNSSへの事業譲渡を「当面凍結」としているが、元NSS社員からは「譲渡されたらもうけ第一主義になる」と懸念の声が出ている。

 NSSは東京都目黒区が本社で64年設立。主に高齢者ホームを運営し、GWGの子会社が約93%の株式を持っている。

 元社員らの証言によると、NSS幹部は昨年6月に買収された後、コムスン役員に「うちはお客様第一主義ではなく、利益第一主義」と言われた。NSSの人件費の高さを指摘され、コストダウンとスリム化を命じられたという。

 さらに、介護付き有料老人ホームなど各施設の施設長が月に1度集まる全体会議では、施設長は「コムスン流」に月間売り上げ順に並ばされ、コムスン役員が「空き部屋を埋めることが最大の仕事だ」とげきを飛ばしたという。

 このため、施設長は本来施設に常勤し、業務の実施状況を把握するなど一元的に管理しなければならないのに、営業で施設を空けることが増えたという。その後、複数の施設を束ねるマネジャーが施設長を兼務するようになった。省令では、指定介護老人福祉施設の管理者は常勤でなければならず、敷地外の施設管理者などを兼ねることを禁じている。

 法令違反状態は半年近く続き、昨年12月にコムスンが東京都に監査された後はいったん中断されたが、その後、再び兼務するようになったという。元社員は「施設長は利用者の家族に体調を伝えたり相談に乗るなど施設全体に目を配る重要な仕事。コムスンはコスト削減のためこれを軽視していた」と話している。【東海林智】

コムスン:法令無視の運営 シルバー社 施設長、兼務に 06/10/07(毎日新聞)

 訪問介護大手「コムスン」の介護事業不許可問題で、同社が「日本シルバーサービス」(NSS)を買収後、施設管理に専従しなければならない施設長を兼務とするなど、法令を無視した施設運営を強いていたことが分かった。「営業効率のみを重視したため」と指摘されている。親会社の「グッドウィル・グループ」(GWG)は、コムスンからNSSへの事業譲渡を「当面凍結」としているが、元NSS社員からは「譲渡されたらもうけ第一主義になる」と懸念の声が出ている。

 NSSは東京都目黒区が本社で64年設立。主に高齢者ホームを運営し、GWGの子会社が約93%の株式を持っている。

 元社員らの証言によると、NSS幹部は昨年6月に買収された後、コムスン役員に「うちはお客様第一主義ではなく、利益第一主義」と言われた。NSSの人件費の高さを指摘され、コストダウンとスリム化を命じられたという。

 さらに、介護付き有料老人ホームなど各施設の施設長が月に1度集まる全体会議では、施設長は「コムスン流」に月間売り上げ順に並ばされ、コムスン役員が「空き部屋を埋めることが最大の仕事だ」とげきを飛ばしたという。

 このため、施設長は本来施設に常勤し、業務の実施状況を把握するなど一元的に管理しなければならないのに、営業で施設を空けることが増えたという。その後、複数の施設を束ねるマネジャーが施設長を兼務するようになった。省令では、指定介護老人福祉施設の管理者は常勤でなければならず、敷地外の施設管理者などを兼ねることを禁じている。

 法令違反状態は半年近く続き、昨年12月にコムスンが東京都に監査された後はいったん中断されたが、その後、再び兼務するようになったという。元社員は「施設長は利用者の家族に体調を伝えたり相談に乗るなど施設全体に目を配る重要な仕事。コムスンはコスト削減のためこれを軽視していた」と話している。【東海林智】

中国新聞(2007年6月9日)より

グッドウィル剣が峰

「奇策」国の反感招く 赤字に不祥事重なる

中国新聞(2007年6月9日)より

コムスン社長辞任へ

廃止届 処分逃れ認める

朝日新聞(2007年6月9日)より

事業所処分逃れ グッドウィル会長了承

コムスン社長辞意 譲渡は当面凍結

朝日新聞(2007年6月9日)より

折口会長 ワンマンな「将軍様」

後継選び順位づけ

朝日新聞(2007年6月8日)より

コムスン

処分逃れを許すな

中国新聞(2007年6月8日)より

コムスン、系列譲渡凍結へ 

厚労省一転強気の指導 「処分逃れ」批判後押し

朝日新聞(2007年6月8日)より

コムスン 監査の数時間後 廃止届

一度に42ヵ所の例も

コムスン:「譲渡予定」先との一体化、都監査で突然中止 06/09/07(毎日新聞)

 訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)が、買収した「日本シルバーサービス」(NSS、目黒区)の社員に対する一体化指導などを東京都の監査が昨年12月に入った後、突然やめていたことが分かった。直後にコムスンの役員4人がNSSの役員の兼任をやめている。こうしたことから、コムスンや親会社の「グッドウィル・グループ」(GWG)が、処分が出た際にNSSに事業譲渡するため方針転換した可能性が高いと関係者は指摘している。

 元NSS社員ら関係者によると、昨年6月にコムスンに買収された後、NSS社員は、コムスン側からコムスンの社名と施設名が書かれた名刺を持って仕事をするように指示された。社員の連絡先がコムスン本社というケースもあったという。

 また、GWGには「原因があるから結果がある」「正しくないことはするな。常に正しい方を選べ」などとする「GWG十訓」、コムスンには「お客様第一主義に徹します」などとする「コムスンの誓い」というグループや会社のモットーがある。NSSでは買収後に毎朝、始業前に唱和させられるようになった。

 ところが、昨年12月に都の監査がコムスンに入ると、唱和が突然中止になった。また翌年1月には、コムスンの役員4人がNSSの役員の兼任を解いたことも既に判明している。NSSへの「同一化」が突如方向転換したことに、NSS元社員は「当時から処分を受けた時の受け皿にうちを使う気だとうわさになった。今回の譲渡決定までの速さといい、入念な準備をしたとしか思えない」と話している。

 NSSは昨年6月にコムスンに買収され、今年5月にGWGの連結子会社になった。現在は東京都や神奈川県などで38カ所の介護付き有料老人ホームなどを運営している。厚生労働省がコムスンの全事業所の新規指定・更新の禁止を通知した6日夜、GWGはコムスンの全事業をNSSに譲渡する計画を発表。翌7日に厚労省が譲渡計画を凍結するよう行政指導したことを受け、GWGは「当面凍結する」としている。【東海林智】

コムスン「当面譲渡凍結」折口会長辞任せず、GWGで継続 06/08/07(読売新聞)

 グッドウィル・グループ(GWG)が、子会社「コムスン」(東京都港区)の介護事業をグループ内の別会社に事業譲渡しようとした問題で、GWGの折口雅博会長は8日記者会見し、事業譲渡をいったん凍結させることを表明した。

 都道府県から不正を指摘されると、先に事業所を自主廃業する「処分逃れ」を組織的に繰り返していたことを認め、コムスンの樋口公一社長を引責辞任させるとしたが、自らは会長職にとどまるとし、介護事業も続ける意向を示した。

 昨年12月にコムスンによる介護報酬の不正請求の疑いが浮上して以降、折口会長が記者会見したのは初めて。

 事業譲渡の関連では、コムスンの子会社だった「日本シルバーサービス」(NSS)の株式を先月末、グループ内の別会社に譲渡していたことについて、「厚生労働省による処分を想定し、介護事業の受け皿にするためだった」と認めた。

 その上で、NSSへの事業譲渡を厚労省から凍結するよう指導された点について、「現在のところ凍結しているが、今後、みなさんの理解が得られれば継続したい」と述べ、グループ内での譲渡に含みを持たせた。介護事業の継続についても「強い思い入れ」があるとして、GWGとしての撤退は否定した。

 自主廃業による処分逃れについて、折口会長は「樋口社長から1か所でも指定取り消しを受ければ、連座制を適用されて、全拠点の更新ができなくなると言われたから」と説明、自らも「了承していた」とした。

 しかし、利用者の不安を取り除いたり、従業員の雇用を確保したりすることが目的だったとして、「処分を骨抜きにし、脱法行為ではと思われたが、決してそのようなことではない」と繰り返した。

 会見では辞意表明した樋口社長が「すべて私の責任」と謝罪を重ねる一方、折口会長は「私が続けないとグループが社会的役割を果たしていくのは難しい」と述べ、経営トップから退く考えはないことを強調した。

 一方、厚労省の阿曽沼慎司・老健局長は8日夕、記者会見し、GWGが組織的な「処分逃れ」を認めた点について、「処分を逃れるために廃業届を出すのは本末転倒だ。指定取り消し相当の事実を起こさなければいいのであり、虚偽申請などしないのが本来の姿だ」と批判した。同省は来週、樋口社長らを呼び、改めて今後の対応について事情を聞く。

コムスン:信用に大ダメージ 経営責任あいまい 06/08/07(毎日新聞)

 「顧客サービスと雇用の確保を優先した」−−。8日、会見したグッドウィル・グループ(GWG)の折口雅博会長は、子会社の訪問介護最大手、コムスンを舞台に繰り返された不正行為について、「悪意」がなかったことを強調した。しかし、今回、明るみに出た不正や厚生労働省の行政処分を受けた後の対応から浮き彫りになったのは、同グループのずさんな経営体質そのものだ。折口会長は自らの責任を認めながらも、現職にとどまるといい、経営責任の取り方があいまいだとの批判が高まりそうだ。

 「志と理念を持って取り組んできたことに強い信念と自負を持っている」。折口会長は会見で、介護事業に対する強い思い入れを語った。しかし、実際にコムスンが繰り返し行っていたのは「処分逃れ」とも言える事業所の廃止。処分を受けると、今度はグループ内の別の企業への事業の譲渡を打ち出し、「処分を骨抜きにするもの」と強い批判を浴びた。

 折口会長は、コムスンの事業所廃止について、樋口公一社長から事前に相談を受け、「(厚労省の)指定取り消しを受けると運営できなくなる」と言われて、自ら認めていたことを明かした。介護サービスを継続させるためというが、不正に対する認識の甘さは否定できない。

 この日の会見では、不正に関する社内調査について質問が出たが、コムスンが事業所開設を申請した際、提出した計画の記録書類が約半分も行方不明になっており、ヘルパーの水増しなど実態さえつかめていないことが判明。管理体制の不備を露呈した。

 また処分を受けた後も、自ら情報開示することをせず、この日の記者会見も、報道機関から再三の要求を受けて、ようやく開いたものだった。

 折口会長は自らの責任について「辞めるべきぐらいのことをしてしまった」との認識を示しながらも、「続けないとグループの社会的使命を果たすことは難しい」と、続投の意向を示した。しかし、介護の現場に混乱を引き起こし、介護ビジネス全体への不信感さえ生じさせた責任は重く、辞任を求める声が高まりそうだ。

 今回の問題が経営に与える影響について、折口会長は「業績の変化については分からない」と述べるにとどめた。しかし、GWGの06年6月期の連結売上高1859億円のうち、633億円を計上するコムスンのつまずきは、グループの経営に大きな痛手となりそうだ。

 07年6月期は、減損会計の適用でコムスンに235億円の特別損失が計上されることなどが響き、GWGの連結最終(当期)損益は300億円の赤字見通しだ。しかし、高齢化が進む中で介護ビジネスは今後も成長が期待できる分野で、介護事業の中核をなすコムスンの事業を外部に譲渡することになれば、GWGは成長路線の転換を迫られることになる。

 また、今回の問題でGWGの信用は大きく傷ついた。本業の人材派遣事業などにも影響を及ぼすことも予想され、今後の対応によっては、経営の根幹を揺るがす事態につながらないとも限らない。【平地修】

コムスン:ようやく会見 ずさんな実態次々と 06/08/07(毎日新聞)

 厚生労働省の“退場通告”から2日たち、ようやく公の場に現れた訪問介護大手「コムスン」の親会社「グッドウィル・グループ」の折口雅博会長。不正行為について自らの関与を認め初めて謝罪したものの、「利用者のため」と事業継続の正当性を強調し、引責辞任も否定した。2時間半を超えた会見で、次々と明らかになるずさんな実態。「介護をする資格があるのか」と報道陣から何度も追及されたが「チャンスをお与えください」と繰り返した。

■「脱法と考えず」

 全事業の不許可という厳しい措置は、コムスンが不正を指摘された事業所を、取り消し処分直前に一方的に廃止したことが原因だった。コムスンは「再配備の一環だった」と弁明していたが、コムスンの樋口公一社長は会見で、折口会長に「1カ所でも取り消されれば、連座制ですべて更新できなくなる。自主廃止は違法ではない」と進言していたことを明らかにした。「脱法行為とは考えなかった」と折口会長。言葉を詰まらせながら「結果的に処分逃れと思われても仕方ない」と語り、樋口社長も「処分逃れ」が目的だったことを認めた。

 常勤ヘルパーの水増しという不正申請の背景にある人員不足を、折口会長は3〜4年前から知っていたが、グループの基本理念にある「拡大発展」の路線を止めなかったという。事業所では介護報酬の不正請求も発覚したが「大半が事務的なミスで、決して悪意はなかった」と釈明した。一方で「介護を食い物にしたのでは」との批判には「公金を無駄にしてしまい、そう言われても仕方ない」とうなだれた。

■進まぬ社内調査

 折口会長らは「お客様や従業員に不安を与えないことが第一」と繰り返し、関連会社の「日本シルバーサービス」への事業譲渡計画を「セーフティーネットが作られ、安心が広がった」と自賛した。再発防止のため法令順守の担当者を増やすなどの体制強化に取り組んでいることも強調した。

 しかし、会見では約2000カ所の半数近い事業所で指定申請の書類が行方不明になり、不正申請を巡る社内調査が進んでいないことを明らかにした。樋口社長が「管理がずさんだった。調査結果が出るのは、ずっと先になる」と説明した。

 また樋口社長は、コムスンの事業が不許可になるのを見越し、日本シルバーサービスを受け皿とするために資本関係や役員を切り離す対策を取っていたことも明かした。事業継続に対する批判に、折口会長は「志と理念を持っている」と語気を強めた。

■「留任」は崩さず

 「私がいないとグループが立ち行かない」。折口会長は1年間の役員報酬(約6000万円)返上も表明しつつ、留任の意思を崩さなかった。介護事業への思い入れを重ねて強調し「利得行為ではない」とも。しかしコムスンの樋口社長だけが辞任を表明したことに「トカゲのしっぽ切りでは」と批判を浴びる場面もあった。

コムスン問題、閣僚も包囲網…厚労相「処分逃れ」明言 06/08/07(読売新聞)

 「今のような譲渡という形では、国民の理解を得られないで、混乱するのではないかと伝えた」。

 介護保険法の不備があらわになったグッドウィル・グループ(GWG)の訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)のグループ会社への事業譲渡問題。

 国会で介護保険法の見直しに言及した柳沢厚生労働相は8日午前、閣議後の記者会見でも、事業譲渡の「凍結」を望む姿勢を強調した。この日は、ほかの閣僚からもGWGの手法に対する疑問の声が相次いだ。

 柳沢厚労相は「ご指導に従いますと返事を受けたと聞いている」と述べ、厚労省の方針に沿って事業譲渡が凍結されるとの見通しを示した。コムスンの事業所が、都道府県の指定取り消し処分直前に廃業届を出していたことについて「処分を回避するために、先手を打つということがあったようだ」とし、厚労省として「処分逃れ」と認識していることを明言。「そういうことがあったことも、われわれの処分の背景にある」と続け、同社の全事業所で新規の指定や更新を5年間認めない決定には、こうした脱法的行為が影響したことをうかがわせた。

 この日は、ほかの閣僚も次々とGWGに言及した。菅総務相は「問題があった企業が、グループ会社に委託することは、社会常識的に考えられない」と強く批判。高市少子化相も、「法的な対応は厚労省で検討すべきだが、道義的には、今回のコムスン側の対応は大いに問題だと感じている」。尾身財務相は「国民の目線に立って常識的に解決することが必要。ルール上は何も規制できないという官僚的な対応はよくない」と述べた。

 制度のあり方についての意見も目立った。

 長勢法相は「公的資金を使う事業に民間営利企業が入る時に起こりがちなことだと思う」としたうえで、「一般論として、介護保険だけでなく、税金や強制的に徴収される保険料を民間営利企業が使うことは色々考えなければならないという問題をあらわにしたのではないか」と指摘した。

 これに対し、大田経済財政相は「一方的に民間の参入が悪いという方向ではなく、健全な介護市場、介護保険制度のあり方に向けてルール整備が必要」と話した。

 この問題について、GWGは8日午後、折口雅博会長ら幹部が記者会見し、今後の方針を説明する予定。

新潟県で不適正請求の疑い コムスン運営の19事業所 06/08/07(産経新聞)

 新潟県は8日、訪問介護最大手「コムスン」が新潟県内で運営する19の事業所で、介護報酬の不適正請求などが疑われるケースが見つかったと発表した。

 県福祉介護事業者指導室は、県内の同社の計36事業所で5月中旬から監査を実施。同室によると、保険給付対象外のサービスについて介護報酬を請求したり、事業所の指定申請時に届け出されていた「管理者」の勤務実態がないなど虚偽申請が疑われるケースがあった。

 同室は調査を続け、不適正請求の事実が確認されれば、支給された介護報酬の返還を求める方針。

グッドウィル・グループ(GWG)については良く知らないが、 一般的には悪質な事をする会社の体質は潰されるまで変わらない。

「『役員の中にコムスンの役員が含まれていないかなど通常の申請時より厳しく審査したい』 としながら『これだけ大きな問題を起こしたのだから、会社側もきちんとした対応をしてくるのではないか』という見方も示した。」

考えが甘い。今度は、もっと巧妙にしてくると考えた方が良い。騙されれてから相手が悪いと 嘆くのは愚か者である。

コムスン:別会社に事業譲渡…都道府県に戸惑い 06/07/07(毎日新聞)

 コムスンが関連会社「日本シルバーサービス」への事業譲渡方針を突然発表したことに、事業者指定の権限を持つ都道府県には、戸惑いが広がっている。厚生労働省は現段階で譲渡が適法かどうかの判断を保留しており、自治体担当者は「どうすれば利用者を守れるのか」と悩む。

 独自監査でコムスンの不正請求を最初に指摘した東京都。担当者は「不正体質はグループ全体の問題の可能性がある。現場は『申請されたから認めます』で済まない」と語る。都は4月、コムスンの3事業所の指定取消処分をしようとした矢先、廃業届を出された苦い経験がある。コムスン側の手法に強い疑問を示しつつ、国に対しても「相手の出方を予想していなかったなら、判断が甘すぎる」と指摘する。

 埼玉県の担当者は「受益者を保護することが第一義」とし、譲渡を「事業所がなくなるよりはいい」と受け止める。ただし不正が発覚した事業所を廃止したことは「組織的な印象を受けた」と話す。神奈川県高齢福祉課は「申請を受けた時点で慎重に見極め、特に有料老人ホーム、グループホームなど入所施設は配慮する」との姿勢だ。

 今回の通知の直接の理由に原因になった事業所があった青森県は「法令上問題がなければ、色めがねで見るわけにもいかない」としつつ「日本シルバーサービスは県内に事業所がないので、どういう会社かも分からない」と戸惑う。急展開の連続に「朝から新聞の切り抜きを集めて勉強中」と苦笑する。

 厚生労働省は「まず今のサービス利用者保護の計画を出させ、内部で譲渡するのであれば厳しく審査する」としている。幹部からは「今の時点では譲渡計画の実効性に何の担保もない。株主向けのアピールでは」と疑問も漏れている。

コムスン:別会社に事業譲渡…東海3県、容認に歯がゆさ 06/07/07(毎日新聞)

 訪問介護最大手「コムスン」の親会社、グッドウィル・グループ(GWG)が関連事業をグループ内の別会社「日本シルバーサービス」に譲渡する方針を打ち出したことに批判が集まる中、譲渡先会社からの新規事業所の申請を審査することになる都道府県の担当者は、利用者のサービスを確保する必要もあり、審査を含めた対応に苦慮している。

 県内に110のコムスンの事業所がある愛知。県高齢福祉課の担当者は「脱法的なことを認めてしまうことには、行政として『これで良いのか』という歯がゆい思いがある」と打ち明ける。その一方で、「一番重要なのは、利用者に適切なサービスが安定供給されるかどうか。(コムスン後の)受け皿が確保されるのであれば、やむを得ない面もないわけじゃない」と複雑な心境をのぞかせた。

 三重県の長寿社会室は「県内に日本シルバーサービスの事業所はないはずで、詳しい情報がない」と戸惑いを隠さない。その上で「同社から新規申請が出た場合は、役員の中にコムスンの役員が含まれていないかなど通常の申請時より厳しく審査したい」としながら「これだけ大きな問題を起こしたのだから、会社側もきちんとした対応をしてくるのではないか」という見方も示した。

 岐阜県にはコムスンの事業所が36あり、今回の処分で更新が認められなくなる13事業所について、経営を譲渡するか利用者の受け入れ先を探さなくてはならなくなる。県高齢福祉課の担当者は「法的に問題がなければ、事業譲渡を認めない理由はないが、(介護請求の不正請求など)背景が背景なので、国や他の自治体の方針を見極めたい」としている。

【武本光政、田中功一、中村かさね】

「コムスン」介護集金を業者が代行、トラブル続発 06/07/07(読売新聞)

 介護事業所の新規指定などが認められなくなったグッドウィル・グループ(GWG)の訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)が介護サービスを利用した高齢者らの集金業務の一部を債権回収業者に代行させ、「支払い済み」と主張する利用者との間でトラブルが頻発していたことが7日、わかった。

 回収業者への委託は違法な取り立てにはあたらないものの、ほかの業務に比べて苦情が頻発。「債権管理がずさん」として、回収業者側から3か月で契約を打ち切られる事態になった。

 関係者によると、同社は昨年11月、都内の債権回収業者と契約。支払いが滞っている介護サービスの利用者負担分について「集金代行」の形で業務を発注した。

 実際の請負では、同社が提供した利用者の個人データに従って、業者が「弊社は債権の調査・管理等を行っている。支払いをされる場合は右記口座へ早急に送金下さるようご案内申し上げます。至急ご連絡ください」という文面のはがきを郵送していた。

 ところが、業者に対して、はがきを受け取った利用者から「支払いが済んでいる」「架空請求ではないか」といった苦情が約100件も相次いだ。このため、業者はトラブルの多さから収益が見込めないと判断、今年1月末で請負を打ち切ったという。同様の苦情は、都や国民生活センターなどにも寄せられている。

 元職員らによると、コムスンでは利用者負担分(1割)が現金払いされた場合、職員が入金処理を怠ったり、本社の手続きミスで滞納扱いのままになっているケースが頻発していた。「利用した覚えがないのに請求のはがきが届いた」という苦情は各事業所にもよく来ていたといい、同社が十分な確認をしないまま、回収業者に集金代行を委託していた実態がうかがえる。

 回収業者については、読売新聞の取材に対し、コムスン以外の複数の大手介護事業者が「契約していない」と回答しているほか、コムスンの元社員らは「利用者から入金があっても、滞納者リストから名前が削除されないことがあった」と証言している。

 同社をめぐっては、都内の9割近い事業所で、介護保険外の散歩への付き添いを「身体介助」としたり、サービス時間を実際よりも長くしたりするなどして請求額を水増ししていたことが判明しているが、利益優先主義が浮かび上がった形だ。 

          ◇

 この問題で、都福祉保健局は、コムスンに対し、利用者向けの総合的な相談窓口のほか、事業所ごとに相談窓口や専用電話を直ちに設置することを6日付の文書で指導した。

 また、指定更新が認められなくなる事業所については、早急に引き継ぎに関する全体計画を策定し、遅くとも今月中に文書で報告することも求めた。

 このほか、都は、利用者サービスの低下防止や、廃止する事業所の利用者に対して、代わりの事業者を確実に紹介することなども指導した。

日商会頭:「社保庁を解体」「グッドウィルの責任大きい」 06/07/07(毎日新聞)

 日本商工会議所の山口信夫会頭は7日の定例会見で、年金支給漏れ問題について「民間では考えられないようなずさんで無責任な体制だ。早急に社会保険庁を解体して改編を急いでやるべきだ」と社保庁の体質を批判。政権を担ってきた自民党の責任を指摘したが、「政争の具にはせず、与野党が一致して国民が安心できる対案を示すことを最優先すべきだ」と語った。

 また、事業所の新規指定・更新禁止処分を受けた訪問介護大手「コムスン」が介護サービス事業のグループ会社への譲渡を決めたことについて、山口会頭は「脱法行為であり、社会的には許されないのではないか」との認識を示した。そのうえで、「親会社のグッドウィルの社会的責任は大きい」と厳しく指弾した。【内山勢】

監査の数時間後に廃業届 コムスン、処分逃れ?各地で 06/07/07(読売新聞)

 自治体が事業所の監査のため社員を呼び出した数時間後に、自ら廃止届を提出――。厚生労働省が厳しい処分を打ち出した訪問介護最大手「コムスン」は、各地の事業所でそうした不自然な形で廃止届を出していた。神奈川県では一度に42事業所を廃止。自治体からの指定取り消し処分を免れようとした可能性が高く、自治体側は、コムスンの不誠実な姿勢が反映されているとみている。

 5月16日、東京都は港区にあるコムスンの事業所の監査で、同社の社員を呼び出した。「虚偽の申請をしましたね」。開設の際のヘルパーをめぐる不正な申請を追及した都の担当者に、社員は事実を認めたという。

 ところが数時間後、コムスンの別の社員が都庁を訪れ、同事業所の廃止届を出してきた。都の担当者は「書類が整っていれば、届け出は受理せざるをえない」。内定していた同事業所への指定取り消し処分は、廃止届によりできなくなった。

 こうしたケースは都内の別の3事業所でもあった。都は昨年12月から2月にかけて、186事業所を監査。葛飾、中央、世田谷3区の3事業所で、開設時に辞めたヘルパーを責任者として届けるなどの虚偽申請が裏付けられた。都は3事業所の指定取り消し処分を内定したが、こちらも3月、コムスンへの聴聞通知を出す直前に廃止届が出されたという。

 都はコムスンに対し、廃止事業所の利用者の受け入れ先を確保するよう指導した。

 神奈川県では4月下旬から県内61カ所の訪問介護事業所のうち23事業所での監査を開始。5月30日に横浜市と相模原市の2訪問介護事業所に「取り消し相当」の通知を出す予定だった。しかし、その30日に、この2カ所を含む42カ所の29日付の廃止届が届いたため、処分はできなかった。

 一斉に廃止届が出されたことについて松沢成文知事は7日、「要介護者に対する裏切り行為だ。処分すべきは処分し、指導すべきは指導すべきだ」と批判した。廃止された事業所が担当していた要介護者らは、同社の残った事業所などに引き継がれたという。

 三重県は、県内にある全14事業所を対象に、5月24日〜6月6日の日程で監査を計画、事業所ごとに監査日を通知した。ところが松阪市、四日市市などにある4事業所は監査が入った直後に廃止届を提出。別の2事業所は監査の直前に廃止届を出した。同県によると、各事業所があげた廃止の理由は「近隣事業所との合併」「法人全体として安定経営を維持する」が多かったという。

 愛知県内の1事業所も6月、県が監査を行う当日になって突然、廃止届を提出したという。

コムスン事業所の新規・更新、2011年末まで認めず 06/06/07(読売新聞)

 厚生労働省は6日、グッドウィル・グループ(GWG)の訪問介護大手「コムスン」(東京都港区)の全国の事業所の新規指定と更新を、2011年12月まで行わないよう都道府県に通知した。

 2006年4月施行の改正介護保険法により、不正な行為があった事業者による指定・更新を5年にわたり認めないとする規定を適用した。コムスンは、全国8か所の事業所で、雇用していない訪問介護員を勤務しているなどと偽り、介護事業所指定を不正に取得したことが問題とされた。この規定を全国規模で適用するのは初めて。

 同省によると、5月末現在、同社の介護事業所は2081事業所(介護予防サービス事業所除く)あるが、同法では不正がなかった事業所も含めて更新が5年間禁じられるため、来年度には1424事業所に減少、最終的には、2011年度に426事業所にまで減る。2081事業所には、訪問介護だけでなく、デイサービスやグループホームなどの事業所も含まれる。サービス利用者は、更新時期まではサービスを受けることができるが、事業所の更新が認められないと、事業所を変えなければならなくなる。

 同省によると、不正があったのは、東京都内の4か所と青森、群馬、岡山、兵庫県の各事業所。都内では別の事業所のヘルパーを常勤扱いするなどして、介護保険法の基準を満たしたように装って申請していた。

 このうち、不正があった兵庫県の事業所の指定申請が昨年12月だったため、この時点から起算して5年間、更新や新規指定を行わないこととした。改正法ではまた、事業所の指定更新制を新たに設け、事業所は、不正がなくても6年ごとに指定を更新しなければならないとしている。

 厚生労働省介護保険指導室は、「来年4月の最初の更新時期まで時間があるので、コムスンはその間に、利用者に影響が及ばないよう、適切に対応してほしい」と話している。

 コムスンは、1988年設立。97年にGWGが資本参加し、現在はGWGの100%子会社。訪問介護事業者最大手で、利用者は約6万5000人。訪問介護のほか、居宅介護支援などの事業所を全国に展開している。

コムスン:解説 制度揺るがす不正、厚労省強い姿勢 06/06/07(毎日新聞)

 全国に約2万カ所ある訪問介護事業所の約1割を占める最大手のコムスンが撤退を余儀なくされることは、介護サービス全体への影響も大きい。それでも厚生労働省が厳しい処分に踏み込んだのは、コムスンの不正が組織的に行われていた疑いが濃く、放置すれば、介護保険制度への信用性低下にもつながるとの懸念があるとみられる。

 コムスンを運営するグッドウィル・グループは、総合人材サービスの大手。介護保険事業への参入を早々と表明し、00年4月の制度開始時には業界最大規模の体制を整えた。しかし、わずか3カ月後には利用の低迷から社員4400人のうち1600人のリストラ方針を表明し、事業所数も増減を繰り返すなど、不安定な経営が続いていた。

 今回の処分理由は、青森県と兵庫県での職員数の虚偽申請だが、コムスンは東京都、岡山、群馬県などでも不正な申請が発覚している。介護報酬を請求できない掃除の時間を加算するなどの不正請求も明らかになっており、本社が各事業所に手口を指示していた疑いも持たれている。

 介護報酬の不正請求を巡っては、コムスン以外の事業者への処分も全国で相次いでいる。処分が続けば全国にサービスが行き届かなくなる懸念もあるが、厚労省老健局は「新規参入を促してカバーしていきたい」と不正の監視と排除を最優先する姿勢だ。【清水健二】

コムスン:不許可…「現場に影響大きい」利用者ら不安 06/06/07(毎日新聞)

 訪問介護の最大手の「コムスン」が、介護保険事業から撤退する公算が大きくなった。厚生労働省は6日、コムスンに介護施設の新規開設や更新を今後認めないことを決定。勤務実態の虚偽申請が、2万4000人に及ぶ従業員を抱える業界トップの「崩壊」につながった。介護関係者や全国利用者に衝撃と不安が広がった。

 「利用者が多いので、影響は少なくないでしょう」。認知症のお年寄り家族を支える活動を20年以上続ける群馬県前橋市の竹田千恵子さん(82)は、不安の声を上げる。さらに「本来介護は、企業が利潤を追求する対象になじまない。人手が足りないので民間が担うのはやむを得ないが『それぞれの家庭に密着して地道に支えるのが本質』という警鐘を鳴らしている気もします」と、厚生労働省の出した厳しい「決定」を解説してみせた。

 介護保険法が施行され、社会福祉協議会が行ってきたヘルパーの仕事の民間化が一気に進められた。コムスンは、地元の人を採用し、急成長してきた経緯がある。「介護保険法に基づき、利益を追求できる枠は一定なのに、収益を無理に増やそうと、介護員の水増し請求を続けてきたのではないでしょうか」と竹田さんは推測する。

 「コムスンが行った不正は絶対に許されないが、このままコムスンが介護事業から撤退することになれば、介護の現場に与える影響が大きすぎる」と心配するのは、大谷強・関西学院大教授(社会保障)。「最も被害を受けるのは介護を受ける利用者。慣れたヘルパーの介護を受けられなくなる不安は大きい。コムスンが抱えるケアマネージャーやヘルパーなども失業してしまう」と話した。

 介護保険利用者への情報提供を行っている「介護情報ネットワーク協会」(神戸市)の糟谷有彦代表理事は「(コムスンの対応は)悪質だったのである程度は予想できた結果だ」と話す。そのうえで、「コムスン以外の事業所が充実している地域でなく、コムスンに頼ってきた地方への影響は計り知れない。地方を中心に新たな『介護難民』が発生する可能性がある」と指摘した。

コムスン:厚労省、介護不許可 撤退は不可避か 06/06/07(毎日新聞)

 グッドウィル・グループ(GWG)の訪問介護最大手「コムスン」(東京都港区)が青森、兵庫県で運営していた事業所で雇用していない訪問介護員を勤務しているなどと偽って申請し、事業所指定を受けていた問題で、厚生労働省は6日、コムスンの介護事業所の新規開設や更新を認めないよう都道府県に通知した。介護事業所についてこうした処分が下されたのは全国初めて。コムスンは介護サービス事業から撤退する可能性が強まった。

 同省老健局によると、コムスンは06年7月に青森県、今年1月に兵庫県内の事業所の新規指定を受けたが、その際、勤務実体のない職員数を水増しするなどの虚偽の申請をした。

 コムスンは、04年4月〜今年1月、東京都、岡山県、青森県、群馬県、兵庫県の計8事業所の新規指定の際に虚偽の申請をしたことが各都県の監査で発覚。各都県は各事業所を廃止処分にした。

 介護保険法では、事業所が廃止されると、より厳しい「指定取り消し」処分ができなかったが、昨春の同法改正で「居宅サービス等に関し不正または著しく不当な行為をした」申請者に対し、指定取り消し処分ができるようになった。このため同省は、昨春以降に指定された青森、兵庫県のケースについて規定を適用し、申請者であるコムスンが全国展開する事業所の新規指定・更新を認めないようにした。

 今回の処分により、申請者のコムスンの役員が、別会社で介護サービス事業を行うこともできなくなる。利用者は、更新期限を迎えるまでは各事業所でサービスを受けられる。

 コムスンは全国に約2081事業所を展開しているが、今後、更新期限(6年間)を迎える事業所が順次廃止されていくことになる。その結果、コムスンの事業所は2011年度には426カ所になり、事業継続は困難になる。【柴田朗、清水健二】

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