国土交通省のHPに 大型底びき網漁船の操業中における転覆・沈没海難(100トン以上)の再発防止の向けて(提言) のページがあります。そこには、「十分な復原性及び乾舷を確保すること。」 「船内に取り込んだ漁獲物が船体の動揺によって流動することのないよう措置を講じること。 また、その積み込み場所に留意し、適正なトリムとすること。」等が書かれています。 外国船の中には、乾舷がでたらめだったり、同形船でない他の船の復原性資料を持っていたり、 国際航海を行っているのに、JP(日本の海運局)が沿海や平水区域のために作成され承認された 復原性資料だけを持っている船舶が存在し、現在も日本に入港してきています。
大型底びき網漁船の操業中における転覆・沈没海難(100トン以上)の原因分析 をPSC(外国船舶監督官) の検査にも生かすべきだと思います。そうすれば、 ロシアの貨客船の横倒し、 比貨物船転覆、 北朝鮮籍貨物のでたらめな自転車の積み付け 等の問題解決や事故の防止に役立てることができるでしょう。知っていて出来ないのは、知らない事以上に 問題があると思います。
内航船では、逆三角の形をして乾舷マークが表記されます。近海以上になるとマルイチの 乾舷マークになります。乾舷の位置がさがるのが常識です。ところが、上記のような船舶が、 日本にも入港しています。普通は、逆三角の乾舷マークを消して、第2甲板の上にマルイチ の乾舷マークを付けるのです。参考資料: 中国塗料のHPから
そして、日本の国内トン数を使用するのです。元日本籍の二層甲板の貨物船にこのような 違反が多く見られます。日本で建造された船舶なので、日本のPSCは違反を見つけることが できると思うのですが、あまり指摘されていません。(以前よりは、指摘されていると 思います。)
乾舷マークが上記の図のように第二甲板よりも上にあると言うことは、 内航船で運航されていた時よりも荷物が積めることを意味します。 波の高さが比較的低い平水や沿海区域よりも国際航海区域で運航する ほうが荷物を多く積めるのは、おかしくないですか?
このような場合、復原性や安全性にも影響があります。乾舷や復原性に
関する事故のHPを参考にしてください。
漁船第一安洋丸沈没事件(横浜地方海難審判庁)
下記の規則を参考にしてください。
第2節 総トン数の第36条を見てください。第36条の要件(1)は、「満載喫水線の位置が上甲板から第2層にある甲板
(以下「第2甲板」という。)を乾舷甲板として満載喫水線規則(昭和43年運輸省令第33号)
の規定により算定した乾舷の下端又はその下方にあること。」と書いてあります。
満載喫水線が第2甲板の上になった場合は、この規則は適用されないと思います。
つまり、SOLAS等の国際条約に対して、国際トン数を適用しなければならない。
第2甲板の上に満載喫水線があることは、どのようなメリットがあるかと言うと、多くの 荷物が積めます。小さな船に多くの人を乗せると沈みそうになったことを体験がありますか。 乾舷マークは、これ以上荷物を積んではいけない制限を表示しているのです。乾舷マークが 上に上がると言うことは、多くの荷物を積むことを意味しています。乾舷マークが水面より 下にあると違反がすぐに見つけられるので、乾舷マークを上にあげるのです。トラックで言えば、 載貨重量を多めに書き換えているのと同じになります。これなら、トラックの重量を 量られても問題にならないでしょう。
RES. A. 4994(XII)により、キールが1994年7月18日以前である総トン数が1600トン未満の船舶は、 国内トン数をSOLAS条約(海上人命安全条約)等の国際条約に適用できます。 これを利用した悪質な行為です。
国際船級協会連合(IACS)のメンバーである船級協会は、船舶の安全のための規則を持ち、IACS で最低限の規則を作り、メンバーはその規則を厳守するようになっているようである。このため、 多くの荷物を積めるように船体を伸ばしたりすることにより乾舷マークを上げる(喫水を増す) ことが簡単にできないのである。なぜなら、船体強度を増すための追加工事が必要になるからで ある。興味がある人は、 次を参考にしてください。
残念ながらICLL(国際満載喫水線条約)の第1規則には、「主官庁は、船体の全体的な 構造上の強さが指定フリーボードに対応する喫水に対して十分なものであることを確かめなけ ればならない。主官庁が認定した船級協会の定める要件に従って建造され、かつ、維持されている 船舶は、十分な強さを有するものと推定することができる。」と書いており、与えられた乾舷 マークで十分な強度を持つことを要求していますが、詳細な基準を記載していないので、 事故が起こるまでは違反が可能です。
すくなくとも日本の規則又は日本海事協会の沿海(CS)のみの規則を満足して建造された船舶 の乾舷マークが、国籍が変り、遠洋区域に変った時に、元の位置以上の上げられるのは、 常識で考えてもおかしいと思います。
いろいろな 要素で、事故が起これば規則が改正されるかもしれません。 平成 18 年 6 月に国土交通省が ISO9001 認証された事実は変化として現れるのか?それまでは、日本のPSCの対応次第でしょう。
この乾舷、どこかおかしくない?
客船以外の日本の内航船に対して、傾斜試験を行うことを要求していません。 しかしながら、1974年海上人命安全条約は、総トン数500トン以上の客船及び 貨物船に傾斜試験を要求します。
1974年海上人命安全条約、第II-1章、構造ー区画及び復原性、機関及び電気設備の 第19規則には、次のように書かれています。
(a)各旅客船及び貨物船は、その完成後に傾斜させて復原性の要素を決定しなければならない。
船長には、各種の使用状態における船舶の復原性について正確な手引書を迅速かつ簡単に
得るために必要な信用できる資料を提供し、かつ、その写しを主官庁に提出しなければならない。
(b)船長に提供された復原性資料に実質的に影響を及ぼすような変更が船舶に加えられた場合には、
修正された復原性資料を作成しなければならない。必要がある時は、船舶は、再び傾斜試験を
受けなければならない。
日本に入港してくる元日本籍の船舶は、改造が行われていたり、国際トン数を適用する ような改造が行われており、傾斜試験が必要である。また、日本で建造時に省略された船舶は、 1974年海上人命安全条約に基づいて、証書が発行された場合、傾斜試験が必要である。
内航船として建造され復原性をチェックせずに外航で運航すると、 パナマ船籍の「MARINA IRIS(マリナ アイリス)」 のように沈没することもある。
平成17年神審第99号 裁決 ケミカルタンカーつばさ沈没事件 (国土交通省のHPより) は、小さな不備であっても他の要素が重なり合うと海難の原因となることを示している。 開口部や空気抜き管管頭の不備も沈没の原因となることを示している。
参考:
6月12日付けの朝日新聞によると、京都府舞鶴市の舞鶴港に入港した「貨物船は「ナムサン3」(298トン)で、10日に入港し、北朝鮮の貨客船・万景峰 (マンギョンボン)号の貨物の一部を積み込んだ。近畿運輸局による船舶検査で、 海図の不備や船室入り口の敷居が基準より低いことなどがわかった。 」と書いてある。
この情報から何がわかるだろうか。「船室入り口の敷居が基準より低い」と言う事は、 この船に改造が行われたか、建造時には沿海区域になっていた、又は、沿海区域を航行して いた船舶であったと推測される。なぜ、このような推測ができるのか。理由は次の通りで ある。
国際航海に従事する船舶は、1966年国際満載喫水線条約を満足しなければならない。 第12、13、17及び18により、船室入り口の敷居の高さが380mm(第2位置)又は600mm(第1位置) 以上でなければならない。敷居の高さが380mmで問題を指摘されれば、それは乾舷マークを 二層甲板よりも上にあげたと言うことである。乾舷マークが二層甲板よりも下にある 場合、敷居の高さを指摘されれば、船が以前は沿海区域又は平水区域で運航されていたか、 検査でいつも見落とされていたことになる。
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